ごあいさつ

残業の海を漂流中のモノカキ常習者の日々。いつかアトガキの港へ帰還するために。 ブログタイトルの「Beam Us Home!」は勿論、ティプトリーのあの名作「ビームしておくれ、ふるさとへ」からの引用です。作品のアトガキを書くことを目標に、創作とその周辺の…

「DAHUFA:守護者と謎の豆人間」

中国映画史上初のPG13(中国にはレーティング制度が無いので自主規制)のバイオレンス・アクションとの触れ込みの「DAHUFA:守護者と謎の豆人間(大护法)」を見て来た。実は7月下旬の公開初日にも一回見ている。感染の拡大局面に都心の繁華街を歩くことに…

「ファンタジーの美しさ」についての数千字(intermission)

intermission:「プロパガンダ」についての私的な思い出 (承前) coalbiters.hatenadiary.org ということで、「羅小黒戦記」についてだ。 と書き始めようと思ったが、なかなか筆が進まない。なので、話は少し逸れるけれども、私が一連の雑文を書くきっかけ…

「ファンタジーの美しさ」についての数千字(その2)

その2:映画「トールキン」(ドメ・カルコスキ監督、2019年) (承前) coalbiters.hatenadiary.org ということで、ドメ・カルコスキ監督の映画「トールキン」(2019年)について。けれどもその前に、トールキンの「指輪物語」について、簡単に言及しておき…

「ファンタジーの美しさ」についての数千字(その1)

その1:まえせつ(用語の定義とか) 連休に入って、布団の中でごろごろしながらTwitterを見ていたら、映画版「羅小黒戦記」を中共のプロパガンダと見なす、いささか大ざっぱすぎる感想が流れてきたので、何となく自分にとって「ファンタジー」とは何か、と…

2016夏マルメ・スコーネ・麦畑ぼんやり行(6)

不況、ウォーターフロント開発、都市再生(承前) ヴェストラ・ハムネンで道に迷う。 という次第で、見るべき観光名所は観光客らしく観光したと思ったので、旧市街のあるであろう方向目指して歩き始めた。地図は見ていない。そもそもマルメのどこに何がある…

2016夏マルメ・スコーネ・麦畑ぼんやり行(5)

不況、ウォーターフロント開発、都市再生(承前) 今となってはあまりよく見えない近過去 マルメにはかつてコックムス社の造船所があって、1世紀以上の長きにわたってその城下町として栄えたらしい。しかし、1970年代の造船危機のあおりを受けて1980年代には…

2016夏マルメ・スコーネ・麦畑ぼんやり行(4)

水辺の遊歩道を歩く。 住み心地のよさ、あるいは街を住みこなしている感覚。 運河沿いの遊歩道を散歩して感じたのは、ちょっと驚くほどのストレスのなさだ。緑が多い、水が流れている、鳥が沢山いる、人混みはない、しかし人通りが全くないのではなく、視界…

2016夏マルメ・スコーネ・麦畑ぼんやり行(3)

なぜマルメなのか:次に個人的動機。 横というか、斜め後ろから撮ったために今いち貫禄のないマルメ中央駅。背後に見える建物は、今回泊まったサボイ・ホテル。駅からは運河を渡ってすぐなので、五分もかからない。外食が苦手なので、旅先ではどこで何を食べ…

2016夏マルメ・スコーネ・麦畑ぼんやり行(2)

なぜマルメなのか:まずは実用的情報。 オーレスンド海峡の木更津としてのマルメ なぜ猛然とマルメに行きたくなったのかの理由は幾つかあるのだけれど、旅行的観点から言えば、単純に行くのが便利だからだ。マルメはスウェーデン南部の都市だが、地図を見れ…

2016夏マルメ・スコーネ・麦畑ぼんやり行(1)

まえせつ:旅の目的。 本当は、去年の予定だった。何やら猛然と「マルメに行きたいぞ」という気持ちが湧いてきて、旅程をメモった。それはパソコンの前に一年ばかりずっと貼ってあったけれど、「マルメ」「カルマル/エーランド島」「ボーンホルム島」「オー…

あまりにもあからさまで、あっけらかんとしたディストピア:武雄市図書館(その2)

2:見聞の続き。 承前。この記事は、九州初上陸の一見さんが、武雄市図書館・歴史資料館を訪れた見聞記であって、余所者による第一印象を記したものです。帰宅後に調べたこととあわせた考察は後の記事で行う予定なので、あわせて参照されたい。 * さて、武…

あまりにもあからさまで、あっけらかんとしたディストピア:武雄市図書館(その1)

1:意図と見聞。 連休直前の金曜日に福岡に用事ができたので、この機会に九州の北西部を回ってみることにした。九州ははじめてで、全くもって土地勘がない。とりあえず目的地を長崎に定めて、路線図を広げて眺めていた。すると途中に武雄温泉駅というのがあ…

音楽としての物語:レイ・デイヴィス『アメリカーナ』

レイ・デイヴィスといえば、一昨年のフジ・ロックフェスティバルで、往年のキンクスの曲を聴衆への歌唱指導つきで披露したり、付箋だらけの自著を(当然英語で)朗読するなど観客の忠誠心を極限まで試した後で、「来年にはアルバムを出すよ。もう一度日本に…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(16)

しばらく間があくうちに、暑さにうだっていたウィーンの夏はどこの別世界かという季節が到来して、ゴキブリさえも凍える寒さでは記憶もだいぶあやふやですが、ようやく最終回にたどり着きました。 DAY6-2:豪勢な建物において享受するということ(2) オード…

第17回文学フリマに出店します。

11月4日、東京流通センターで開催される第17回文学フリマに出店します。スペースはA-31、サークル名はCoal Biters、新刊は「虫とかかわる」シリーズ(になる予定)の第1作「予告」です。念のために注意を喚起しておきますと、本作は全編、例の口にすること…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(15)

DAY6-1:インフラ的ウィーン探訪 ドナウ川へ行く。 「ドナウ川へ行く」は同行者のリクエストで、当初はウィーンから鉄道を使ってブダペストまで遠出して、そこで堪能するつもりだったのだが、旅行計画の企画も佳境に入った6月頭に洪水のニュースがあったので…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(14)

諸事情により間が空いてしまいましたが、復活しました。あと数回、お付き合いください。 DAY5-3:豪勢な建物において享受するということ(1) ウィーンと言えば音楽の都だが、音楽の季節は6月末で終わってしまい、7月は音楽的には夏休みなのだった。「…という…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(13)

DA5-2:熱中症的ウィーンへの帰還 リンク歩き後半戦。 まだ午後も早いので、昨日挫折したリンク歩きの続きをやりつつ王宮に行くことに。ドナウ運河を上にした地図で左上、ショッテンリンク駅で下車して地上に上がる。早くも暑い。運河の横には例によって立派…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(12)

DAY5-1:熱中症的ウィーンからの逃亡 シェーンブルンは丘の上まで登るべきこと。 冷房のないホテルの部屋にも、さすがに扇風機は備え付けられていたので、一晩中首振りさせていたところ、朝目が覚めたらあっさり事切れていた。連続運転しすぎてへたばったらし…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(11)

DAY4:熱中症的ウィーン プラハ本駅→ウィーン・マイドリンク。 かくして、プラハの滞在期間は終わり、ウィーンへの移動日となる。いろいろと観光名所を満喫したけれども、そちらを優先しすぎてカフェで休憩とスーパーで買い物が思うに任せなかったのは心残り…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(10)

DAY3:丘の上のプラハ 城へ。 翌日はいよいよ登城である。旅行社の現地係員の人は、トラム等を活用した疲れにくい行き方を懇切丁寧に教えてくれたのだが、母のリクエストは昔の入城ルートで行きたい、ということなのだった。 まずは旧市街の道をぐるぐる。ヘ…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(9)

DAY2-7:フィギュア都市プラハーー動く人形たち からくり時計義務鑑賞。 かくして、カレル橋の上で多幸症的な東アジア系観光客の一家に呼び止められて写真を撮ったり、物乞いが何故かほとんどもれなく抱きかかえている、静かで大人しい毛の長い大きな犬たちを…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(8)

DAY2-6:フィギュア都市プラハーー観光名所のアイドルたち 承前。つまり、プラハの魅力であり特徴でもあるものは、都市の表面に今なお見て取ることのできるさまざまな時代、さまざまな様式の痕跡であり、それらの唐突な出会いにあるといっていい。例えば、(…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(7)

DAY2-5:庭園都市プラハ 午後は川を渡って、マラー・ストラナ地区へ。前回プラハ旅行で考えなしに道順のショートカットを試みて、想定外のところに出てしまい、一時間ばかりうろうろしていた因縁の地である。今回は迷わず行きつけるだろうか。 ヴルトボヴスカ…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(6)

DAY2-4:フィギュア都市プラハ――都市に棲息する石や金属のいきものたち さて、人の少なく空気の美味しいところからプラハ城を思うさま遠望する、という本日最初のミッションを無事達成し、歯車たちは山を下る。ただし、地元民らしき人の背中を追っていったら…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(5)

DAY2-3:ヴィシェフラド!さんかく!!! ヴィシェフラドは三角形をしている訳ではありません。単に、ヴィシェフラドがかっこよかったのです。 ヴィシェフラドが本格的な要塞だった件について。 承前。角にキュビスム建築のある道を登ってゆく。私の母校は結…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(4)

ローラン・ビネの『HHhH』を読了。『HHhH』は、ハイドリヒ暗殺を目的として立案・実行された「類人猿作戦」の実行者に魅せられた「僕」が大量の史料や事件を題材にした先行作品をリサーチしながら、何とか虚構を混ぜ込まないでこの事件を書き上げようと苦闘…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(3)

DAY2-1:都市のまじりあう時代について。 睡魔との戦いに敗れて1/4観光日程度を浪費したといえども、プラハ滞在はさらに丸2日ある。世界に冠たる観光名所=プラハ城をハイライトとするなら、初日は遠くから徐々に城に接近して感興を高めるのはどうであろう。…

2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(2)

DAY1:NRT→VIE→PRG 案外スケジュールが自由にならない仕事の間に無理矢理旅行を突っ込んだので、直前の一週間は残業続きであった。さらに、航空券ホテルつきのツアーといえども、成田を出国してから自己責任で現地にたどり着かなければならないのだから、方向…