2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(12)

coalbiters2013-08-21

DAY5-1:熱中症的ウィーンからの逃亡

シェーンブルンは丘の上まで登るべきこと。

冷房のないホテルの部屋にも、さすがに扇風機は備え付けられていたので、一晩中首振りさせていたところ、朝目が覚めたらあっさり事切れていた。連続運転しすぎてへたばったらしい。やわなものである。
さて、今日はまずシェーンブルン観光である。朝8時15分にチケット売り場が開くので、それまでに到着しなければならぬ。ということで、午前7時半のウィーンの外気はひんやりとして上着も欲しい感じ、街中は掃除と給水の時間帯で、歩道を動くのはゴミ掃除の人とスプリンクラーと、地下鉄駅から吐き出される勤め人の皆さんくらい。前日の第一印象は(主に暑さのせいで)最悪だったが、落ち着いた朝の風情で、この街のイメージはかなり改善された。

(カールスプラッツ駅前で絶賛仕事中のスプリンクラーたち)
48時間券を買ってホームへ。ウィーンの地下鉄では次の列車が到着するまでの時間(「あと何分」)を掲示していて、ストレスが無くていい感じだった。どうせ数分待てば次が来るのだから、東京の鉄道もラッシュ時に「3分遅れております。大変申し訳ございません」なんてうざいアナウンスをせず、表示方法を変えればいいのに。シェーンブルン方面の列車は、ラッシュとは反対らしく、しかし観光客であろう人々でかなり込んでいて、車内検札があり、案の定何人かの若者がとっつかまっていた。ラッシュの車中でやる訳にはいかないだろうし、やっても大して成果は無いだろうから、当局にとってはきわめて合理的かつ効果的な対応と言えよう。
シェーンブルン駅から宮殿の入り口までは、大きな道路に沿って数分歩くのだが、そこに早くも何台ものバスが横付けされている。大半は中国人のツアーだが、日本人のツアーもあり、欧米の人々のツアーもある。すなわち、シェーンブルン宮殿は団体旅行のメッカである。チケット売り場のおばさんやお姉さんのよどみない対応によって、個人旅行者もまた続々と入場者に変換されてゆく。

想像を絶するほど巨大ではないが、宮殿の名に恥じぬ程度には十分大きいので、母は大いに満足したようだ。8時半の開場とともに、団体客にまぎれて入場。宮殿に辿り着くまでが仕事と心得て、宮殿の部屋部屋に関するガイドブックの説明は読み飛ばしてきたので、中に入っても有り難みがよく判らない(おかげで一部の部屋は見そびれたような気がする)。どれも似たような豪華ではあるがもさっとした部屋で、観光客で混み合い、開いている窓は少なく、従って室内の印象は閉鎖的で空気は何となくよどんでいる。とりあえず、マリア・テレジアさんの頑固というかブレないシノワズリ趣味だけは印象に留めたあたりで、出口。まだ1時間くらいしか経っていない。
折角なので庭園をゆっくり散策することにする。日射しが強くなってきたので、木立の間を歩くのだが、木々が大きすぎて何も見えない。仕方ないので宮殿前の広小路みたいなところに戻って、宮殿の反対側にある噴水まで行く。時間が早いので、噴水はまだ始まっていない。さらに足を伸ばすことにして、噴水の後ろの丘を頂上のグロリエッテ目指して登ることにする。結構急かつ長大な坂道だが、ジグザグに折れるたびに森の蔭に入るしベンチも所々にしつらえてあるので、熱中症でくたばる気づかいはない。ジョギングで登る猛者に幾度も追い越されても、気にしない。何しろ見下ろす景色がすばらしいのだ。

家族のデジカメを借りて行ったら消し忘れた時刻表示が邪魔だが、それ以外はさえぎられることなくウィーンの市街が一望できる。右の方にそびえる尖塔はシュテファン大聖堂という認識でよいのだろうか。こうして見ると、ウィーンの旧市街は一応何となく丘の上にあるということがよく判る。王宮の中心軸に沿って続く緑も見えるけれど、これが何なのかは判らなかった。

てっぺんのグロリエッテ。何だか意図のよく判らない書き割りのような建物。空はここでも綺麗である。
丘を下り、噴き出し始めた噴水を眺め、木立の下をぶらぶら歩く。風は信じがたく涼しく気持ちよいのだが、全体のスケールは騎乗とか馬車の人向けで、徒歩の人向けではないように思う。すれ違う人が英語だかドイツ語だかで「ジャパニーズ・ガーデン」と言ってゆくので何だろうと思っていたら本当に日本庭園が現れる。1913年シェーンブルクの庭師作とのこと。丁度百年前だ。

そのすぐ先には巨大な温室があって修繕中。いつまでにどれだけの費用がかかる。よって寄附をお願い、と大きな看板が言っていた。

温室と言えども両翼があってたいそう威厳がある。機能的な一方で細部は蔓のようにカールしていたりして、心憎い感じである。

再び宮殿に戻って来て、テラスから庭園を望んだところ。足元では昼近いぎらつく太陽の下、高校生くらいの少年少女たちが先生の指揮にあわせてモーツァルトなどをぶんちゃかブラスバンドで演奏していた。シェーンブルンの庭園で演奏することが本邦の甲子園みたいな位置づけにあるものかは判らないが、どこの国にもスポ根というものはあるのだなあと思ったものである。彼ら、熱中症にならなければいいけど。
ということで、お昼を食べ、売店をひやかし、ますます増えゆくバスの列の脇を通って地下鉄駅へ。暑いさかりのウィーンに帰るのだ。続く。