2013夏プラハ+ウィーン観光名所うすかわ編(15)

coalbiters2013-10-06

DAY6-1:インフラ的ウィーン探訪

ドナウ川へ行く。

ドナウ川へ行く」は同行者のリクエストで、当初はウィーンから鉄道を使ってブダペストまで遠出して、そこで堪能するつもりだったのだが、旅行計画の企画も佳境に入った6月頭に洪水のニュースがあったので、結局取り止めになってしまったのだった。しかし、「ドナウ川へ行く」というミッションが消えてなくなる訳ではない。という次第でウィーンのドナウ川へ行くことになった。
とは言え、地図を見ると市の中心部からはやや離れているし、蛇行の果てに近代技術であっさり河川改修されてしまったような案配で、太い川と細い川がまっすぐ平行に流れているし(東京の東側在住の人間なら、「あ、荒川放水路!」と言うと思う)、おそらくはそういう次第であまり観光名所ではないようなので、都会志向の観光ガイドブックの扱いはすこぶる冷たい。とりあえず、地下鉄の駅に「Donauinsel」とか「Alte Donau」とかあるので、そこに行けば近くに川があるだろう、という適当さで地下鉄に乗る。

ドナウインゼル駅のホームより。川の真上にある。都営新宿線東大島駅みたいな感じ。線路に平行して歩行者と自転車用の通路があり、自転車の人が結構な速度で横を疾走してゆく。
再び地下鉄に乗って(地下鉄と行っても、この辺では高架を走っている訳だが)、セキュリティの厳しそうな国連都市を足元に見つつ、アルテドナウ駅へ。

ここも駅から水面が見えるが、これは駅から5分くらい歩いたあたり。反対側は交通量の多い幹線道路なのだけど、ここだけ切り取れば、郊外田園の風情。ただし、旧と名のつくだけあって、盲腸川どころか今や実態は巨大水たまりであるらしい。なお、ウィーン近郊のドナウ川の改修史については、ここが参考になる。

ドナウインゼル駅で下車して、中洲島を散策。散歩道やサイクリングロードが整備され、川べりは存外ワイルドな感じの緑が快く、鳥も多く、走りに来る人や遠足に来る幼稚園児の他は人も多からず、いい環境だった。中心部の観光に飽きたら、お弁当を持って息抜きに来るのがよいと思う。

おまけ。ドナウインゼル駅の壁に描かれていた絵。落書きだと思うけれども、クオリティが高いのでちょっと判断に苦しむ。

再開発ガスタンクへ行く。

中心部のシュテファンプラッツ駅まで戻り、路線を乗り換える。駅の壁には広告や映像ニュースが流れていて、列車を待っている間はしきりとエジプトのことをやっていて、しばらくニュースから離れた生活をしていたので、一体何だろうと思っていた。ともあれ、目的地はガソメーター駅だ。
ガソメーターとはーー

ウィーンのシンメリンクは、かつて首都の重要な工業地帯でした。そのシンボルとも言うべき4基のガソメーター(旧ガスタンク)が、建築家4チームの設計で、モダンな都市センターへと生まれ変わっています。
1899年の建造当時ヨーロッパ最大規模のガスタンクだった歴史的建築は、1999年から2001年にかけて抜本的に修復されました。
ジャン・ヌーヴェル、コープ・ヒンメルブラウ、マンフレート・ヴェードルン、ウィルヘルム・ホルツバウアーなどの建築家がそれぞれ1基のガソメーターを担当、4基のガソメーターは、産業革命後の都市発展を象徴する歴史的な外観を保存しながら、ウィーンの新たな都市センターへと増改築されたのです。(以下略)

つまり、再開発ガスタンクである。機能停止した百年前のガスタンクを改修して、集合住宅兼ショッピングセンター+αにしてしまったのだ。これは萌える。
勿論、このガスタンクは「高さ75メートルで、プラーターの大観覧車が完全に中へ納ま」る巨大さなので、遠望するのは結構たやすい。プラハからの鉄道の中からも見えたし、空港に向かう高速道路からも見えた。しかし、ガスタンクの足元で上を見上げて「ほえー」と感嘆するためにかかる移動時間は、たった10分かそこらなのだ。行かないと損である。

駅を出たところに、いきなり遠慮会釈もなくそびえ立つガスタンク。でかっ。

こんな感じに縦に4基並んだガスタンクに、現代建築がくっついている。左上のE棟は外壁のカラフルなシネコン。周辺には駐車場があったりして、建物はこんなにインパクト大なのに、雰囲気はふつうの(高級というよりは庶民的な)大型モールという感じで、違和感が半端ない。


メーターがそのまま残されていたり、作業用出入口っぽいのがあったり。

こういうアングルから撮ると、昔日の工業地帯の表情がしのばれます。ガスタンクなのに、上に銃眼っぽい装飾をしてしまうあたり、城塞建築のイメージを踏襲しているのか。

ちなみに、現在の周辺はこんな感じ。ガソメーターと同時期とおぼしき煉瓦造の建物と、20世紀後半的な煙突が共存した工業地帯。

ガスタンクの横には、対抗しているのか、こんな奇抜な建物群が。斜めに建てるのが流行っているのか?

入口を見つけて、いよいよガスタンクの中に。下層に店舗や音楽学校等公共的な施設が入り、タンクをとっぱらった上層が吹き抜けをぐるりと囲んで集合住宅になっているのはどれも同じだが、デザインはそれぞれ異なっている。

これはD棟。吹き抜けに木が生えている?

次はC棟。吹き抜けの下のガラス蓋はドーナツ型。

B棟の下の蓋もドーナツ型だが、これはドーナツの真ん中の穴から上を見上げたところ。

最後にA棟。ここは地下で地下鉄駅と接続している。ということで、そのままエスカレーターで下りて、ツアーはお終い。なお、上層の集合住宅のつくりは、ここで紹介されている。学生時代だったら秘密基地っぽくて楽しいのではないかと思う。

その他のアングラ建造物。

インフラ遺構ではないにせよ、実用本位の建造物の遺構は中心部にも幾つかあったりする。

シュトゥーベントア駅前の昔の城壁の名残り。

ガラスに反射して見づらいが、シュテファンプラッツ駅構内にも大聖堂の地下遺構を展示している場所があったり。じっくり解説を読んでいたかったが、土産物購入ミッションが控えているため、涙をのんで離脱。以下次号。