はぐるま、せったいする。
夏至の頃には、あたりは腐った東京湾のにおいでいっぱいになる。可哀想に、青潮にやられてどこかで大量に浮いているらしい。
「つまり、この街では平穏な貌の下で大虐殺が行われている訳だな」布きれの下でそいつが言った。「ふん、文字にすると大層恐ろしげだ」
そいつはしばらく黙ってからひとりごとのように呟いた、「それにしても昨日の肉は美味かった」
「まあ、久しぶりの牛だったし」
「ああ、実に美味かった」心もち声を低めてそいつは繰り返した。私は黙っていた。それから釘を刺した。「いくら美味しくても、毎日は食べないよ」
ほお、とそいつは呟いた。何だか不吉な感じだった。ほお、しかし君は先週、一日一食しか食わなかったじゃないか。
「君は喉に違和感を感じている。それは何の予徴だね」
「ーー風邪です」
「ツボを押すとことごとく痛いとか、シエスタがいくらあっても足りんくらい眠いとかはこの際勘定に入れないとしても」布きれの下からそいつは続けた。「今、風邪を引くと君が困るんじゃないかね」
「ーー困ります」
「しかし君の職場は困らない」だんだん尊大になりながらそいつは告げた。「君はご丁寧にも仕事に一週間のバッファを見てるからね。まあ、それだけ寝てれば風邪も直るさ」
「冗談じゃない!」私は叫んだ、「私の貴重な自由時間を」
するとそいつはくるりと身を起こし、にやりと笑って言ったのだった。それじゃ、君は私にしてくれることをようく判っているじゃないか。
ということで、自分の体に脅されて接待しましたさ。これで少しは機嫌を直してくれるといいのだが。
接待ついでにこれを見た。
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あまりの驚きに固まってしまって、痒くはなりませんでした。でもおもしろかったよ。