N.Z.デーヴィス特集(備忘録)

ふと思い立ってナタリー・ゼーモン・デーヴィスで検索していたら見つけた。マルタン・ゲールの映画つながりってことなのだろうか、守備範囲の広い人だ。

歴史叙述としての映画―描かれた奴隷たち

歴史叙述としての映画―描かれた奴隷たち

ちなみに、この本の一つ前に邦訳されたのはこれ。丁度デリダのめったやたらとハイテンションな文章に難渋している時に見つけて読んだ。歴史学の著作だから、「贈与」なる概念に極端な性格づけをほどこしてラリったりせず、16世紀フランスから拾って来た贈与のバリエーションを分析しつつ、社会における関係性やその緊張関係などを論じている。
贈与の文化史―16世紀フランスにおける

贈与の文化史―16世紀フランスにおける

「帰ってきたマルタン・ゲール」は失踪した夫が数年ぶりに戻って来たので夫婦仲睦まじく暮らしていたが、実は夫は偽物で‥‥という16世紀フランスに実際にあった事件を、史料を元に綿密に再現、検証したNZDの代表作の一つ。1997年に彼女が来日した時、学部に上がったばかりの我々もサクラに動員されて、とりあえず講演の日までにこれを読んで勉強しとけ、と指示された本の一冊だった。講演の内容は今となっては覚えていないけれど、とてもパワフルでかっこいい人だった。以来、NZDは私の心のお師匠様である。ネット上で拾った情報によると、80歳の今も現役ばりばりに論文書いているらしい。
私は未見だが、この事件を元にした映画も作られている(「マルタン・ゲールの帰還」、「ジャック・サマーズビー」)。
帰ってきたマルタン・ゲール―16世紀フランスのにせ亭主騒動 (平凡社ライブラリー)

帰ってきたマルタン・ゲール―16世紀フランスのにせ亭主騒動 (平凡社ライブラリー)

で、今これを読んでいる。史料の中から近世ヨーロッパに生きた異なる宗教、異なる職業の3人の女性の生涯を浮かび上がらせたこのような著作を読んでいると、フィクションで歴史を書くことに対する心構えを根本的に叩き直す必要を感じる。どうすればいいのか、まだ見えないのだが。
境界を生きた女たち―ユダヤ商人グリックル、修道女受肉のマリ、博物画家メーリアン (テオリア叢書)

境界を生きた女たち―ユダヤ商人グリックル、修道女受肉のマリ、博物画家メーリアン (テオリア叢書)