はぐるま、週末の陣地に帰還する。

木曜日の夜に、ひとけのない職場のトイレで「ワルキューレの騎行」をどんぶらこーと声に出して歌っている自分に気づいた時はどうしようかと思ったが(笑)、十字砲火にずたぼろにされることもなく、無事週末の陣地に帰還する。敵も甘いな。とはいえ、今回は言わばアウステルリッツだったので、これからボロジノが控えている。若人たちの夏休み期間中ずっとブラインドを下げたオフィスビルにこもって修羅場る見込み。どうせ自宅じゃ冷房つけないから、早く帰れても困るんだけどさ。あああ。
それにしても会う人会う人「たいへんですねー」と言うので、社交辞令にしても芸のない台詞だな、〆切間近で修羅場ってるのは事実としても、それ以外は別にたいへんじゃないのだが、と腑に落ちずにいたら、どうもウチの仕事場では「新しい仕組みを作る」ってのは「たいへんな仕事」認定されているのらしい。私にしてみると、新しい仕組みを作るのは、とにかく前例がないのだから自分の好き勝手にできるし、文句を言う奴には「そんなら自分でやってみろ」とおおっぴらに啖呵が切れる訳だし、「そんな仕組みは必要ない」と怒る相手には、一部の当事者にとってはそれは勿論当然の事実なので、相手との関係に応じて妥協点を探るか聞き流すかすればいいのだし、むしろ楽だと思うのだが。少なくとも、同じ時間働くなら、旧態依然の仕組みでふうふう言いながら何とかその場しのぎの理屈をつけて80点取る仕事より、出来る奴が使えば150点のアウトプットも可能な仕組みを作ってから、しなけりゃならない仕事ならしょうがないと相手と一緒にぶーたれながら、できるだけ楽してご機嫌に80点取った方が、精神衛生的にはずっといい。深刻な顔して「懸案、懸案」と言いながら転がして取引材料になるのを待つ、というやり方が政治的には多分正しいのだろうけど、そういう勿体ぶりは、文明社会の成果を対価として得るために自分の持てる能力の中から需要のあるものを提供するのが仕事だと考える人間には阿呆らしい。別に文明社会に愛着がある訳じゃないんだ、政治にかまけている暇があったら、引きこもって全然需要の無い下手っぴな小説を書くよ。