はぐるま、週末の陣地を見失う。

週末の陣地まであと一日行程だ、と火曜日あたりからずっと思っていた。どんな長くても二日行程は無い筈なのである。行軍中ずっと、頭の中で「ワルキューレの騎行」がエンドレスで鳴っている。歌詞は何故かすべて「どんぶらこ」に変換されている。どんぶらこーお。どんぶらこーお、どんぶらこっこ。
ところで、火曜日ってどこだっけ? と隣を歩いていた同僚が呟いた。どんな近くても二日行程はある筈だが。

かような状況なので、三角コーナーにてんこ盛りの生ゴミの間をごそごそする名を秘す黒い物体を叩き潰す気力も起きず、やつが流しを徘徊し、スポンジとたわむれ、ざるの下をくぐって悠々と自陣にご帰還あそばすさまをずっと眺めていた。名を秘す黒い物体と言いながら、こやつは赤っ毛なので、どことなく美少年風の愛嬌があるのである。ステンレスの隙間にもぐりこむさまはなかなかしなやかな身のこなしで、猫みたいだったよ。えい、仕方ない。兵糧攻めだ。

ということで、金曜日までは人非人でいます。こんなタイミングで読みたい本が出るなんて、まったく拷問だ。ううう。