王様を待ち続けるのも大変だが、歯車の雑談にも限りがない(1)

英国王のスピーチ」を見て来た。

政権が変わっても「クール・ジャパン」という言葉は居座り続けていて、今や我が国の経済産業省にはクール・ジャパン室なる、ちょっと待てなネーミングの部署まであるのだが、その元ネタは、イギリスの「クール・ブリタニア」というブレアなカッコいいイギリスを売るための売り文句であって、そのさらに元ネタはイギリスの愛国歌「ルール・ブリタニア(Rule Britannia)」なのである、ということを知ったのが丁度一月ほど前、レポートの〆切に呻吟している時だった。こちとら社会人学生なので、あまり時間をかけずに単位をいただくべく、クール系の薄っぺらな話題を切り貼りしてレポートに仕立て上げようと、まあかような邪心を抱いていたのである。
昨今は便利な世の中になったので、たいていの音楽はネット上で聴くことができる。ということで、You Tubeを検索したらーー出るわでるわ、ゴキブリのように。
ネルソン・コスプレ版。ちなみに歌手は女性です。

こちらはすげえ色彩センスのブリン・ターフェル

BBCプロムスというのは、何でもイギリスで夏に行われるBBC主催の一大「気楽なクラシック・コンサート」のことで、特にその最終夜は愛国的な歌のメドレーで会場(どころか各地の都市にも中継して)一丸となって盛り上がるのだそうだ。
げえ。
何も知らなかったあわれな歯車は、愛国歌の洪水に押し倒されて、冷や汗を流して苦しんだ。これに比べたら紅白歌合戦と行く年来る年のコンボなんて可愛いものである。で、しみじみ思った。このどんちき騒ぎに至る愛国歌のパロディとして「クール・ブリタニア」があるってことは、クールの下の土着のブリタニアに対する愛憎は、クールな売り文句にも拭いがたく刻印されているだろう。そこをするっと知らぬふりをして、日英のクールな上半身とクリエイティブな諸々の比較やら影響関係やら政策上の課題やらだけを論じることは勿論可能だけれども、それってすごくつまらんし、多分現実を大誤解しているのだろうなーーかくしてレポートは一からやり直しとなり、歯車は更なる苦しみにのたうったのであった。やれやれ。

といったことを、「英国王のスピーチ」を見ながら思い出していた訳なのだった。つまり、BBCおそるべし、ということである。
続く。(え?)